• 松崎 丈

カンゲキ備忘録【演劇】『笑うゼットンー風雲再起ー』

とき:2019年11月15日(金)

ところ:「劇」小劇場

トツゲキ倶楽部『笑うゼットン―風雲再起―』

 堀口幸恵さん出演の『笑うゼットン』を「劇」小劇場にて観劇。


 ご一緒したのは日本酒と深酒のキーワードで結ばれている悪友のタカ氏。

 今回も待ち合わせの時間に安定の遅刻をかますタカ氏。

 まずはストーリーをCoRichから引用してみよう。


 "絶望が笑ってる  ここは地の果て、プレスセンター"  キタとミナミに分断された国。  その軍事境界線付近にあるプレスセンターに派遣されている記者たち。  それぞれの事情を抱えて、この地に飛ばされた彼らの前で、一発の銃声が…!  果たして、オレたちにやれることはまだあるのか?

 虚構と事実をない交ぜにしながら、カラリとしたさわやかな笑いを散りばめつつ進行する物語。


 シンプルな舞台装置がかえって効果的で、セットのその先にある見えない場所を想像する楽しみを観る者に与えてくれる。

 何よりも心惹かれたのは、物語が「日常の言葉」で織りなされていることだ。


 美々しく飾られた言葉も嫌いではない、色彩豊かな表現にも魅力を感じる。

 しかし日常の言葉こそが最も効果的に、じわりじわりと心の中に入り込んでくる場合もある。


 そしてそのようにして心の中に沁みとおってくる言葉は、その浸潤の速度が緩やかであればこそ、かえって長く心にとどまることがある。


 飾られた言葉が僕たちを導く師であるとするならば、日常の言葉は僕たちの傍らで同じ喜びと痛みを分け合う友達のようなものだ。

 『笑うゼットン』の中にはそのような言葉の友達が、幾人も幾人もいたのだ。

 メインストリームを追われた人間が、追いやられたその場で何かをなそうとするのはよくある話だが、この物語は当の本人たちが「追いやられている」ことに最初は気付いていないというところにもドラマツルギーの妙がある。


 そして追いやられていたことに気付いた人々が、まさに「再起」をもくろむ辺りは、よくある物語の展開だが、「よくある展開」をいかに面白く、小気味よく、しかし心を揺さぶる濃度をもって運ぶかは、役者の力量にかかっている。


 僕はこの物語に接してたしかに心を揺さぶられたし、そして背中を押してもらえたのだ。

 そうだよ、俺にもまだまだできることがたくさんあるじゃん!!

 自分の劇団を1週間後に控えたタイミングでこの作品に出会えたことは本当に幸福だった。目が離せない劇団がまた一つ増えたのだ。

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