• 松崎 丈

カンゲキ備忘録【歌舞伎】『新春浅草歌舞伎』

とき:2020年1月2日(木)

ところ:浅草公会堂

新春浅草歌舞伎

 例年、観劇初めは歌舞伎座ですが、今年は趣向を変えまして浅草公会堂へ。


 若手役者が普段はやらない大きな役を務めるのがお楽しみ、新春浅草歌舞伎へ。


 毎年観ているわけではないが、観るとやはり元気をもらえる。

 初めて新春浅草歌舞伎を観た頃はまだ辰之助だった当代松緑、新之助だった当代海老蔵、菊之助、亀治郎だった当代猿之助など僕と同年代の役者さんがたくさん出演していた。同年代の役者が演じるからこそ感じられる緊張感やスリルがあった。

 やがて当代猿之助、勘太郎だった当代勘九郎、七之助が中心となり、いまは松也が座頭となり……。時代の移り変わりを感じながら、自分より年下の役者たちの活躍を目にすると、生きる世界は違うものの、刺激を受けるところがとても大きい。

 今回の一番のお目当ては菅原伝授手習鑑の『寺子屋』。

 大好きな大好きなこの狂言、松也の松王、隼人の源蔵、新悟の千代もさることながら…米吉の戸浪、これが一番のお目当てだった。

 ここ数年「可愛すぎる女形」として注目を集めている米吉だが、彼の芝居は品位があって色気もあって、実に魅力があるのだ。家柄もあってかまだまだ大きな役を任されることは少ないが、大きな可能性を秘めている役者だと思う。

 その彼が演じるのが戸浪!

 夫である源蔵の旧主・菅丞相へ忠義の念と、一子・小太郎を表上は敵対しながらも真の主と慕う菅丞相の息子の身代わりにする松王丸と千代の愛情、そのいずれもが身に沁みるからこそ苦悩する戸浪。


 「さいぜん連れ合いがお身代わりと思いついたそばへいて、『お師匠様、いまからお頼み申します』と言うたときのこと思い出だせば、他人のわしさえ、骨身が砕くる」のくだり。


 この台詞をいかに真に入って聞かせるかは、そこに至る戸浪の仕草や所作がいかに自然に運んでいるかにかかっている。ここだけ気を入れても、どうも浮ついてしまうのだ。


 米吉の芝居は夫の思いも共有しつつ、千代の気持ちも痛いほど分かっている様が丁寧に描かれていて誠に秀逸。彼の芝居は人の心をちゃんと動かす力を持っているのだ。

 そしてそのあとの坂東巳之助の『茶壷』。

 父・三津五郎も得意としたこの演目。亡き父の背を追う巳之助の想いのようなものがにじみ出るような名演。


 父の背を追うと言えば、海老蔵や中村屋兄弟が注目されがちだが、巳之助も大和屋の看板を背負うべく、日々精進している様がよくよく分かる、コミカルな中に気概を見せる見事な踊りだった。

 どの道を行こうとも、矜持と気概を持って歩み続ける。

 その大切さを教えてくれる若い役者たちの気の入った熱い芝居。

 新年早々、気合を注入してもらった。

 さて、明日は歌舞伎座。

 今年は欲張って新橋演舞場も。

 春から歌舞伎三昧とは、贅沢、贅沢。感謝、感謝。

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